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落ち込んだとき、1時間で「いつも通りの自分」に近づく方法

だれかのなにげない言動にいちいち傷ついてしまう。落ち込んでやる気がでなくなり、家事などいろんなことを溜め込んで、動けなくなってしまうことがあった。物心ついたころからはじまり、数年前までそうした状態が続いた。実に20年近い悩みだった。

そんな自分を変えたくて、どうしたら傷つかなくなるのか、いろんな本を読んだり、人に聞いたりして試してみた。それでも気持ちの弱さはいっこうに変わらない。

あるとき、ふと思いついた。どうしても傷ついてしまうのならば、傷ついたあとの行動を変えてみたらどうだろう? と。今の私は、たいていのことなら1時間あれば、ほとんどいつも通りの自分に戻せるまでになった。


どの程度のことなら効果的かについては、この術を身につけてからこれまでで受けたもっとも大きな”メンタルショック”の事例をご紹介する。

仕事相手の信じられないような不義理をされ、すでに何十時間も費やしたあとで辞退を決めた。費やしたのはこちらばかりで、相手方はほとんど損はないんじゃないだろうか。良いものを作りたい一心だった。報酬は何も得られず、人の板挟みにもなり、泣き寝入りするしかなかった……という、大人になってから久々に悔しさで涙が止まらなくなった一件があった。

(※あくまでも主観なので、私の知りえない事情や常識などがあったのかもしれない。ただ、個人的な感情としてはやはり耐えられないもの)

電話を切ったあと、崩れ落ちて声も出なくなっていた。あとからあとから溢れ出す涙を娘に見られないように、手の甲で涙をぬぐい落とし、つとめて明るい声を出すようにした。

そんな状態から「8割フラット」な自分になるまでにかかった時間は1時間だった。1時間後には、予定外の出来事に遅くなってしまったけれど、笑顔で娘をおふろに入れ、たっぷりごはんを食べて、穏やかに寝かしつけられる状態になっていた。

もちろん、完ぺきに立ち直れたわけではないし、今でもこころの根っこのほうに、その”事件”への苛立ちや絶望、悔しさなんかは残っている。まだまだ癒やしと改善が必要だと思う。

でも、感情のなかのマイナス色はかなり薄まったと言えると思う。折に触れて思い出して、胸がざらりとする、それくらいのものだ。


ここからは「1時間立ち直り術」のお話。このメソッドを効果的に行うためには、3つの手順をきちんと順序立てて行う必要がある、というのが私の持論。

手順1 まずは落ちつくために動く。
手順2 気持ちの輪郭を探る。
手順3 気持ちに寄り添う。


手順1 まずは落ちつくために動く。

絶望した状態を続けることに意味はない。どんどん悪い方向に思考が枝を伸ばしていくから。だから、とにかく落ちつく必要がある。そのためには「動くこと」がとても大事。

ワンオペ育児中の私はできることが限られているため、まずタイマーを1分セットすることからはじめる。そして、1分以内にできそうなことをやる。目の前のものを片づけたり、洗濯ものの仕分けをしたり。これを皮切りに、無心で手を動かしていく。洗い物、掃除、片づけ。とにかく休まずに動く。時間は15分ほどあればいい。

私のような制限がなければ、外に出るのがとても効果的。とにかく動くことで自分が空っぽになるとわかったのは、子どもがいないころ、ジムに行ったらものすごく気持ちが回復したことがきっかけ。

手順2 気持ちの輪郭を探る。

ショックを受けた直後の状態は、うつわになみなみと注がれる液体があり、勢いが強すぎて、それがどんどんうつわの外へこぼれ出しているのに似ている。だから、まずはあふれ出すのを止める必要があった。次にすることは、うつわのなかに入っている液体がなにかを知ること。つまり、気持ちの輪郭を探ること。

ひどくショックを受けたときというのは、たいてい、混乱しているものだと思う。だから、「腹が立っている」と自分では思っていても、実際には「腹が立っているし、そんなことをする人だと思わなかったのに悲しいし、うまく対応できなかった自分が恥ずかしいし……」というように、さまざまな気持ちが複合的に絡み合っていて、それに気がついていない。

だから、自分が今どんな気持ちなのか? ということを、しっかり把握しておく必要がある。

たとえば、先ほどの私の感情を整理すると、

◎怒り:不義理をされたことへの怒り
◎悲しみ:そんなことをする人だとは思わなかった
◎恥ずかしさ:もっとうまい対応があったかもしれないという恥と後悔
◎悔しさ:無名の新人だからであろう対応への悔しさ

少なくともこんなふうに分かれる。

手順3 自分の気持ちに寄り添う

気持ちをきちんと知るのが大事なのは、感情の種類によって、解決策が変わってくるから。

たとえば、「悲しい」気持ちを癒やすには「ひたすら泣く」。「怒り」だったら「カラオケで歌う」とか、「恥ずかしい」なら「失敗したことを学び直す」とか。

感情によって解決策のベクトルが変わってくるのだから、それをすべてごちゃ混ぜにして「これで解決!」みたいなことはない。

一つひとつの気持ちに寄り添い、癒やし、解決策を探っていく。最終的にはこんなふうに時間のかかるものだけれど、この3つの手順を踏まえると、早く気持ちが前向きになる。

この日、娘を寝かしつけたあと、夫がいろいろと話を聞いてくれた。男の人にありがちで、ふだんはすぐに解決策を提示する彼が、ただ気持ちに寄り添ってくれたことで、悲しさはかなり癒やされたと思う。怒りはシャワーを浴びたときに一緒に流してしまった。恥ずかしさや悔しさについては、今も現在進行系で動いている。

判断力が鈍ったときでも使える2つのリスト

上でも書いた通り、ショックを受けたときは混乱しがち。そういうときは判断力が鈍っていることも多い。だから、事前に「しんどいときにすることリスト」のようなものを作っておくと、とても便利。

私が作っているものは2つ。

1.ポジティブ50音

しんどいときは何も考えられなくなるので、自分が元気になるモノ・コト・ヒトを、「あ」~「わ」までの言葉別に集めておこう、という試み。詳しくは著書『時間が貯まる 魔法の家事ノート』(扶桑社)参照。

2.しんどいレベル別やることリスト

家事やその他のやるべきことについて、落ち込んだときは何をやって、何をやらないかという線引きをあらかじめ決めておき、リストにまとめたもの。著書『365日のとっておき家事』(三笠書房)では、落ち込んだときに限らず、自分の状態を5タイプに分けて、やることをまとめるアイデアを紹介している。


世の中にはいろんないやなことがあると思う。以前は、そういうときにただひたすら寝たり、現実逃避したりして過ごしていたけれど、誰かのために、自分の時間をむだにするのってもったいないことだと今は思う。

これは落ち込みやすい私なりの解決策だけど、ほかの人にも役に立てばとてもうれしい。

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